おしごとデザイン研究所

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業務フローと滞留

業務フローを書いて業務改善しましょうとは、よく言われる話です。ですが、現実問題として業務フローの何をどうすれば業務改善が出来るのかというと、割と微妙です。

フロー図は大抵の場合、箱と矢印の連なりで書き表されています。で、目指すところは長さを縮めること、というのが大半です。ですから箱すなわち個々人の作業を減らすということが改善のための方策とされます。

ところが、実際にマジカ!での例を膨大に見てきて感じるのは、それぞれの箱つまり作業そのものに必要な時間というのは、実はさほどでもないのです。そして、矢印でつながっている箱のそれぞれの作業時間を全部足しても、そんな膨大な時間にはなっていません。例えば次のようなフローがあるとします。

開始○→[5分]→[5分]→[5分]→○終了

当然、合計所要時間は15分のはずです。ところが現実には開始から終了までに3日かかってますとか、下手すると2週間かかってますとかいうケースが多く見られます。では、これを「フローを短縮しましょう」と言って、箱を減らしたとして所要時間が10分になるのかというと、あんまり期待できそうにありません。つまり、実は業務改善においてフローそのものをいじることで得られる効果というのは、実はさほどでも無いということになります。

現実問題として、箱を減らそうとしても昨今のコンプライアンス(J-SOXやISOやISMSなど)対応をちゃんとすると、必然的に削れない仕事ばかりになります。1980年代の牧歌的なOAブームの頃ならいざしらず、現代においては「やらざるを得ない」事というのが山ほどあるのですし。

では何をどうすればいいのか。実は見るべきは「滞留」ということになります。矢印で受け取ったら即時でその作業に着手してるのかというと実はそうではなくて、大抵の場合はそれを各自が溜め込んでしまうというところに問題があります。ボールを受け取ったらさっさとパスを出せばいいのに、自分がずっと持ち続けてるわけですね。

では何故さっさと着手しないのか。持ち続けるのか。結果としてフローを滞留させているのか。そこに、以前に「いつか書く」とだけ宣言してそのままの、業務フローのデッドロックとシステムダイナミックスの関係というのが出てきます。そこら辺の話を考えていくと、個人と業務フローの関係や、業務フローの重要性をみんなに理解してもらう、という話につながっていきます。

肝は「滞留の解消」。では何故、滞留するのか。言い換えると「何故人は物事を先送りするのか」というところが、本当に直視すべき問題の本質なのです。

この話、まだまだ続く…と思う。多分w

個人と業務フロー

先の記事で「書きます」と言った小難しい話題はそれはそれとして、ちょっと別の切り口の話題を。

マジカ!のダウンロードページには、業務フローに関する悩み事・困り事についてお聞かせくださいという欄があります。書くの面倒くさいと思うのですが、割と皆さん結構な分量の内容をお書き頂いてて、なるほどなぁと参考にさせて頂いております。

そんな悩み事の中で代表的なものはというと「業務フローが上手く書けない」というものです。まぁ、だからマジカ!に興味を持つということで、納得のお話です。お役に立てればいいなぁと思っております。そしてもうひとつ代表的なものとして「業務フローの必要性をなかなか理解してもらえない」というものがあります。これ、なかなかに切実なお話だと思うのですね。

では、どうして業務フローって必要なのでしょうか。誰が必要としてるのか・何故必要としてるのか・いつ必要としてるのか…、何か面倒くさい話ですけど、でも割と本質論だと思うのですね。

この話題を演繹的に考えていくと、もっともらしい話題は並べられると思うのだけど、でも多分そんな話は山ほどしてらっしゃって、でも伝わらないとか、そういうことなのだと思うのです。なのでちょっと、考えの向きを大きく変えてみます。つまり、個人にとって業務フローって何が得なのか? というところから考えてみたい。ベタですけどw

で、個人にとってのメリットってことを考えるにおいて、さらに思い切って「ひとりしかいない仕事でも業務フローって役に立つのか?」ということを考えてみたいのです。組織の中の個人という話の延長で業務フローの是非論を語ると、世間一般の「あるべき論」の枠の中のままだと思うので。

例えば個人事業主として、まぁ何でもいいのですけど、例えばWebデザイナーさんみたいな職業をしてるとします。プログラマとかでもいいのですけど。そうすると、ひとりですから営業もすれば事務もしますし、あれやこれやと本業と自分が考えたいこと以外のやるべき事が山積みです。割と普通にテンパったりしますw ではそれを解決するのに業務フローを書くとすると、どれだけ効果があるのだろうか。

実は現在の弊社は2名だけの小ぢんまりした状態なので、個人事業と殆ど変わりません。その状態で業務フローを書くとどうか。…実はあんまり変わりません(^^; 何かが特に楽になるというわけでも無いのです。役立つのはむしろToDoリストとかタスクリストと呼ばれているようなものです。備忘録とでも言うのでしょうか。仕事をパスする相手がいないのですから、当然といえば当然です。

当然なのですけど、ここには物凄い真理が秘められている気がするのです。プロセスと呼びフローと呼ぶ。あるいはプロシージャなりプロトコルとも呼ばれる。その時々で色んな言葉を当てはめられている業務フローですが、実は業務フローとは「複数人における受け渡し」なのですね。ですから業務「フロー」というよりも業務「パス」と呼んだほうがいいのかもしれない。ここでいうパスとはサッカーにおけるパスを連想していただくのが、一番近いと思います。手戻り・差し戻しなどはバックパスなのかもしれません。

では、ひとりで完結する仕事の場合の業務フローを明示するメリットとは? …別にイラネーヨw とか書いちゃうと、そもそもの「業務フローの必要性を理解してもらえない」という悩み事へのソリューションにつながっていかない気もするので、この話題も引き続き掘り下げてみたいと思います。

…って、ペンディングばっかり増やしてどうするんだろ、俺w

to be continued

先日の機能と構造の話とその延長線上として、業務フローの本質がメッセージパッシング(に伴うイベントドリブンモデル)であるという話と、業務フローのデッドロックとシステムダイナミックスの関係という話をしたいと思ってるのですが、書き始めたところで別件が立て込んじゃったので、日を改めて書くという決意だけ記しておきますw

構造としての業務フロー

業務フローというのは、構造にあたります。骨組みのようなものです。一方で、以前にも書いたように、業務フローという「モノ」がしっかりと存在するのではなく、あくまでも未来に対する期待・願望・指針でしかありません。つまり触れないし見えない「コト」なのです。

ちょうど先日、サッカーのワールドカップ予選がありました。サッカーでは個々人のプレイヤーやボールそのものは見えますが、プレイヤーの間を受け渡しされるボールの軌跡そのものは見えません。そして実はこの軌跡が業務フローに相当します。

例えば練習のときに、セットプレイではここにAさんが立っていて、こっちからBさんがこのようにパスを出して、のように練習します。しかし本番のときに全く同じように再現できるかというと、決してそうではありません。これは事務作業でも似ていて、ルーティンワークの名前とは裏腹に、実際にはその場その場のアドホックなアドリブが必要となったりします。

ですから、「今後、我社の業務フローはこのようにします」と絵に描いたとしても、それはサッカーの練習のときと同じであって、本番での精緻な再現を保証しません。正に絵に描いた餅なのです。あくまでも、「こういう風に綺麗にパスがつながればいいなぁ・つなぎたいなぁ・つなぎましょうね」という期待・願望・指針でしかないのです。

一方で、その見えない構造の中で、個々人はプレイヤーとしての機能を果たすことになります。機能=ファンクション=関数、つまり入力に対して何らかの処理をして出力をします。ボールを受けてドリブルをしてパスを出す、みたいなものでしょう。こちらは目に見えます。指さしして指摘をすることが可能です。ですから「業務フローを改善しましょう」と言いながら、実際には個々人の機能改善に終始していまうケースが殆どになってしまうのです。ITを導入してもその恩恵に浴せないというのは、パス回しが変わらないからというのが大半です。

機能と構造という観点で考えることが大切であり、業務フローとは構造の話なのです。この話続く…かな?

矢印のはなし

業務フローは流れを表現するものです。そこで流れ図=フローチャートのイメージで、大抵のものは矢印で図示されています。

一方で、これはマジカ!をやりだしてから気付いたのですが、実は一般の人にとって矢印を引くという作業は思いの外精神的に大変だということがわかりました。

マジカ!を実際にお使い頂いてる方々に伺うと、元々は他の道具や手法を使って色々と試みたけど上手く行かなかったり、途中で挫折してしまっていた。しかしマジカ!を知って、これなら何とかなりそうだと直感的に感じてやってみると、やはり上手く行った。…そういう声が多いのです。

もちろんマジカ!は万能ではありませんし、マジカ!を使ったが故の苦労なども同時にお聞きするのですが、総じて共通して言えるのは「他の手法で挫折気味だったが、マジカ!なら何とか出来た」ということです。

ではどうして、そのような違いが生じるのでしょうか。それが冒頭の矢印ということになります。実はマジカ!は矢印がありません。カードを順番に並べていくだけです。ですから矢印を引くという作業自体がありません。もしカードの順序が違っていたら入れ替えればいいですし、間に新しいカードを差し込んでいくのもさほどの手間にはなりません。

これは最初から狙ったわけではなくて、カードという形式を採用したことで結果的にこういう美味しい形になったわけですが、この「矢印って面倒くさい」というところに着眼すると、なるほど色んなケースで改良の余地が見いだせるなぁ、と思えることがあります。

一見あって当たり前に見えるものでも、実は不便さの原因になってるのかもしれない。矢印について思うとき、そんなことも一緒に考えたりするのです。

カードの利点

業務フローを書くための道具は世の中にいっぱいあります。正直いってもうこれ以上増えても仕方が無いんじゃないかとすら思います。そういう現代にあって、マジカ!が他の道具と決定的に違う点、それは名前に含まれている通り「カードを使う」ということでしょう。

マジカ!はマジックカードの略です。つまり魔法のカードです。魔法のようにスラスラ書けるからマジックという言葉を使ってるのですけど、では何故スラスラ書けるのかというと、実はカード形式だからなのです。

より正確に表現すると「穴埋め式のカード」であるというのがポイントです。マジカ!を使うとわかるのですが、取り敢えず思いついたことをカードに書き留めておけば良いという気楽さがあります。何を書いておけばいいのかはカードに質問形式で補助文があるので、それを見て埋めておけばOKです。

最初から順に全部を正しく書く必要もありません。ある一枚を書いておけば「このカードがあるなら、このカードもあるはず」という相互の関連付けルールから芋づる式に後で思い出せるようになっています。

このあたりの諸々がマジックの種と仕掛けだったりします。そのおかげで結果として魔法のようにスラスラと書けるということを実現しています。

この特性に気がついてから、業務フロー以外にもこの「穴埋め式のカード」というスタイルを転用して、色々と便利なカラクリを作ったりしています。販売中の「ITマジカ!」という情報システム開発の要件定義用カードもそのひとつです。それ以外にも公開していないもので色々とやっていますが、いつか機が熟せばそれらも公開したいなぁと思ったりしています。

カードという形式は、何かこう人の心に働きかける魅力のようなものがあるようです。その辺を今後も上手く活かしていきたいと思っています。

名前の由来

マジカ!という名前はマジックカードの略です。まるで魔法のようにスラスラと書けるカードだから、マジカになりました。実はこれ、とあるお客様の発言がきっかけなのです。

元々、情報システム開発における現状分析工程を効率良くするために作ったカードなのですが、私達には特に名前をつけるという意識がありませんでした。ですから「紙をペタペタ貼っていくから"紙ペタ"」などと適当に呼んでました。

ところが実際に使っているお客様が上層部への説明に紙ペタでは格好悪いということをおっしゃったのです。私などは「いや別に名前が無くてもこっちは困らないんで、何か適当に名前を考えてくださいよ」などと、何とも投げやりなリアクションをしていました。

とはいえ放りっぱなしにもできないので、みんなで考えましょうということで、会議室で色々とアイディアを振り絞ったのです。しかしながら妙案が出てこず行き詰まったときに、お客様のひとりがふと「魔法のようにスラスラと書けるカードなんだよなーこれ」と言ったのです。

それを聞いた瞬間、「あ、それ頂きです!」と私が言って、魔法のカードだからマジックカードで略してマジカ、という風に提案したのです。そしたらみんな、爆笑してからそれいいね、って感じで落ち着いたので、それ以来マジカという名前になりました。

もしあのとき違う名前になっていたら、あるいはそもそも名前をつけようという話がなかったら、今頃何がどんなふうになっていたのか。ささやかな歴史のIFに、たまに想いを馳せるときがあったりします。

名前はとても重要です。マジカ!という名前を授かったのは、きっと幸運だったのだろう。そんな風に思っています。