おしごとデザイン研究所

仕事の設計書がスラスラ書ける魔法のカード「マジカ」のダウンロードは"マジカランド"で検索!

矢印のはなし

業務フローは流れを表現するものです。そこで流れ図=フローチャートのイメージで、大抵のものは矢印で図示されています。

一方で、これはマジカ!をやりだしてから気付いたのですが、実は一般の人にとって矢印を引くという作業は思いの外精神的に大変だということがわかりました。

マジカ!を実際にお使い頂いてる方々に伺うと、元々は他の道具や手法を使って色々と試みたけど上手く行かなかったり、途中で挫折してしまっていた。しかしマジカ!を知って、これなら何とかなりそうだと直感的に感じてやってみると、やはり上手く行った。…そういう声が多いのです。

もちろんマジカ!は万能ではありませんし、マジカ!を使ったが故の苦労なども同時にお聞きするのですが、総じて共通して言えるのは「他の手法で挫折気味だったが、マジカ!なら何とか出来た」ということです。

ではどうして、そのような違いが生じるのでしょうか。それが冒頭の矢印ということになります。実はマジカ!は矢印がありません。カードを順番に並べていくだけです。ですから矢印を引くという作業自体がありません。もしカードの順序が違っていたら入れ替えればいいですし、間に新しいカードを差し込んでいくのもさほどの手間にはなりません。

これは最初から狙ったわけではなくて、カードという形式を採用したことで結果的にこういう美味しい形になったわけですが、この「矢印って面倒くさい」というところに着眼すると、なるほど色んなケースで改良の余地が見いだせるなぁ、と思えることがあります。

一見あって当たり前に見えるものでも、実は不便さの原因になってるのかもしれない。矢印について思うとき、そんなことも一緒に考えたりするのです。

カードの利点

業務フローを書くための道具は世の中にいっぱいあります。正直いってもうこれ以上増えても仕方が無いんじゃないかとすら思います。そういう現代にあって、マジカ!が他の道具と決定的に違う点、それは名前に含まれている通り「カードを使う」ということでしょう。

マジカ!はマジックカードの略です。つまり魔法のカードです。魔法のようにスラスラ書けるからマジックという言葉を使ってるのですけど、では何故スラスラ書けるのかというと、実はカード形式だからなのです。

より正確に表現すると「穴埋め式のカード」であるというのがポイントです。マジカ!を使うとわかるのですが、取り敢えず思いついたことをカードに書き留めておけば良いという気楽さがあります。何を書いておけばいいのかはカードに質問形式で補助文があるので、それを見て埋めておけばOKです。

最初から順に全部を正しく書く必要もありません。ある一枚を書いておけば「このカードがあるなら、このカードもあるはず」という相互の関連付けルールから芋づる式に後で思い出せるようになっています。

このあたりの諸々がマジックの種と仕掛けだったりします。そのおかげで結果として魔法のようにスラスラと書けるということを実現しています。

この特性に気がついてから、業務フロー以外にもこの「穴埋め式のカード」というスタイルを転用して、色々と便利なカラクリを作ったりしています。販売中の「ITマジカ!」という情報システム開発の要件定義用カードもそのひとつです。それ以外にも公開していないもので色々とやっていますが、いつか機が熟せばそれらも公開したいなぁと思ったりしています。

カードという形式は、何かこう人の心に働きかける魅力のようなものがあるようです。その辺を今後も上手く活かしていきたいと思っています。

名前の由来

マジカ!という名前はマジックカードの略です。まるで魔法のようにスラスラと書けるカードだから、マジカになりました。実はこれ、とあるお客様の発言がきっかけなのです。

元々、情報システム開発における現状分析工程を効率良くするために作ったカードなのですが、私達には特に名前をつけるという意識がありませんでした。ですから「紙をペタペタ貼っていくから"紙ペタ"」などと適当に呼んでました。

ところが実際に使っているお客様が上層部への説明に紙ペタでは格好悪いということをおっしゃったのです。私などは「いや別に名前が無くてもこっちは困らないんで、何か適当に名前を考えてくださいよ」などと、何とも投げやりなリアクションをしていました。

とはいえ放りっぱなしにもできないので、みんなで考えましょうということで、会議室で色々とアイディアを振り絞ったのです。しかしながら妙案が出てこず行き詰まったときに、お客様のひとりがふと「魔法のようにスラスラと書けるカードなんだよなーこれ」と言ったのです。

それを聞いた瞬間、「あ、それ頂きです!」と私が言って、魔法のカードだからマジックカードで略してマジカ、という風に提案したのです。そしたらみんな、爆笑してからそれいいね、って感じで落ち着いたので、それ以来マジカという名前になりました。

もしあのとき違う名前になっていたら、あるいはそもそも名前をつけようという話がなかったら、今頃何がどんなふうになっていたのか。ささやかな歴史のIFに、たまに想いを馳せるときがあったりします。

名前はとても重要です。マジカ!という名前を授かったのは、きっと幸運だったのだろう。そんな風に思っています。

もしもの世界

業務フローは、シゴトのおきて=ルールの集まりを遂行した結果、振り返ってみるとそこにある一筋の痕跡であると、以前に書きました。では、その元となるルールとは何ぞやというと、未来に対する期待・願望・指針であり、その形式は条件とやることのふたつからなっているとも書きました。

では、条件とはどういうものなのか。条件は、ときにイベント(出来事)とも言うことができます。例としては

「請求書の日付が間違っていたら」
「得意先から注文書のFAXが届いたら」
「トイレットペーパーが無くなったら」

のようなものが挙げられます。このような条件・イベントがあったら、それに紐付く「やること」を実際に行うことになるわけです。逆に言うと、これらの条件・イベントが一切起こらなかったらどうなるのか。各条件に紐づいている「やること」を行うこともないということになります。

これらの条件というのは、形を変えると「もしも~だったら」というような、昔のコントのタイトル形式に言い換えることも出来ます。「もしも」というのは仮定の話ということでもあります。ですから起こりうる未来について想定しておくということになります。思いつかない条件・イベントが発生したら、それがいわゆる「想定外」というものになるのです。

さて、「もしも」とは別に、同じく条件・イベントとして次のようなものもあります。

「食事の前に」→「手を洗う」
「毎週月曜日の17時になったら」→「在庫の確認をする」

みたいなものです。決まったタイミングを示すものです。これもまたルールにおける条件となります。これは決まりきったものとして、正にルーティンワークの代表例のように挙げられるものです。想定されちゃってるからですね。これはルールを守る側もわかりやすいと思います。

では仮に、食事をしないなら手を洗わなくてもいいのだろうか? などと考えるとどうでしょうか。あるいは突発的なトラブルのために、予定していた食事が無くなってしまったとしたら。それでもやはり手は洗ったほうがいいよね、ということになるかもしれませんし、あるいは条件に紐づいてるのですからやはり「別にやらなくてもいいよね」となるのかもしれません。これが在庫の確認をするということであれば、尚更でしょう。

そうすると、条件に関係なくやるべきことというのもあるのではないか、「もしも条件を満たさなかったら」という条件を考えることも必要ではないか。

ルールというのは決めるのは簡単なのですけど、それを遵守して実行するのは大変です。ですから出来るだけシンプルで数が少ないほうが有効に作用すると感じます。となると、条件について考えることは、数を増やさない工夫として結構大切な事ではないかと思ったりもしています。

ルールの形

仕事って何だろうか? マジカ!のバックボーンとしては、次のような構造になっていると考えています。


 仕事=活動と成果


まず、何らかの成果を達成するために行うのが仕事だと考えます。その上で、では何もしなくても勝手に成果が達成できるのかというと、残念ながらそんな都合の良い話は無くて、何かをしないといけません。それをここでは活動と呼んでます。作業とか手順と言い換えても良いかもしれません。

実は、このふたつに加えて「成果としてクリアすべき基準」、言い換えるとチェックリストと呼ぶようなものが必要だと思っています。そうすると、さらに正確には次のようになるでしょう。


 仕事=活動と成果と基準


成果を達成するためには基準をクリアしなければならず、そのために必要な活動を行うことになります。これをマジカ!に当てはめると、「はたらくカード」「成果カード」「チェックカード」になります。

活動が単純ならこれをまとめれば、それで十分に仕事を円滑にする手立てになるのですけど、現実の仕事というのはややこしいことがいっぱいです。だから色々とルールが必要になります。ルールがあれば何をしたらいいのか迷わずに済むからです。

では、そのルールとは具体的にはどういうものか。ルールはふたつの要素で成り立っています。

・条件
・やること

です。例えば「請求書の日付が間違っている場合は、訂正印を押して正しい日付に書きなおす」というルールがあるとすると、前段の「請求書の日付が間違っている場合」というのが条件で、後段の「訂正印を押して正しい日付に書きなおす」というのがやることになります。もっと厳密性を求めるなら、やることは「訂正印を押す」「正しい日付を書く」のふたつになります。

このふたつの要素のうち、条件をイベント(出来事)と呼ぶ場合もあります。ゲームちっくに表現するなら、


 「請求書の日付が間違っていた!」ピロピロリーン!
  どうする?

    請求書を破る
   →訂正印を押して正しい日付に書きなおす
    上司に確認する
    逃げる


みたいな感じでしょうか。このときに間違ったアクションを選ぶと、評価が下がるわけですね。

さて、そこでもう少しこのゲームの例えを使って考えてみると、正しい選択肢を選んだとしても場合によっては、更に別のイベントが発生することもあります。例えば、


  プレイヤーは、訂正印を押して正しい日付に書きなおすを選んだ。
  しかし訂正印が無くなっていた。
  どうする?


みたいな場合です。このような偶発的なイベントごとが実際の仕事にはたくさん発生します。想定外というのは、そういうことです。事前に想定されていてアンチョコ(攻略本とか)を持っていれば、こういうときはこうすれば良い、というのがわかるわけです。これがルールとか掟というものです。それを明記したものが業務マニュアルだったりします。しかしそこに記載されていない場合には、臨機応変に対応するしかありません。

ただ、いずれにしてもこの、


  ルール=条件→やること


という構造そのものは変わりません。ですから先日も書きましたけど、ルールを洗い出すというのが、実はまず重要なのではないかと思っています。

シゴトのおきて

マルモのおきてという番組がありました。子を持つ親としては、最近の芦田愛菜ちゃんの過剰労働っぷりには痛々しいものを感じてしまうのですが、ドラマはとても面白かったです。

さて、そのマルモのおきて、家族をやっていくための決め事をノートに書いていくというのがお約束の展開となっています。これ、結構含蓄あるなぁと感じます。

このドラマでは、阿部サダヲ演ずる主人公が死んだ友人の子供達2人を引きとって、一緒に暮らすというものです。つまり本当の家族ではない。それが一緒に共同生活をするにあたって、円滑な関係を実現するために「おきて」を決めていくのです。

家族じゃない人同士が共同で何かを為すというのは、仕事においてはごく当たり前のことです。円滑に仕事を遂行して目標を達成するには、おきて、「掟」=ルールというものが有効だということにもつながると感じるのです。

先の記事で、業務フローとは実は「掟」の集まりを指針として仕事をした結果、振り返るとそこにある痕跡の道筋のことだと書きましたが、そのルールセットとは意外とドラマのような、ちょっとしたお約束というようなあたりからの取り組みで随分と良くなるんじゃないかという気もするのです。

では、そのお約束というか、おきてというのは具体的にはどういうものなのか。それはまた改めて考えてみたいと思います。

業務フローは獣道

業務フローあるいはビジネスプロセスなどと呼ばれるものは、矢印でつながっている図を見るためか、何となくレールのようなものがしっかりと存在していて、まるでその上を規則正しく物事が流れていくかのような印象を与えがちです。

しかし実際にはどうかというと、そのような整然さとはおよそ真逆なものであると言えます。およそ事前に想定されている通りには物事は進まないというのが、実際に仕事をしている当事者の実感ではないでしょうか。

実は業務フローというのは、レールのようなしっかりとしたものではなく、むしろ何もないところを何度も通っているうちに踏みしめられ出来ていく、いわば獣道のようなものだと感じるのです。

ルーティンワークというと単調でいつも安定的に変わり映えすることも無く、淡々と物事が進んでいくように思われますが、実際にはかなりアドホックなことが多く毎回臨機応変な対処を求められたりします。むしろ創造的・クリエイティブとされるようなことのほうが、よく見ると同じ作業の繰り返しだったりします。反復によってスキルが鍛えられるというのは、そういうことなのでしょう。

このルーティンワーク、アドホックだったりするので、昨日まで通れた獣道が今日は通れないなどということも度々です。ですから、結果から振り返ってみればそこには一本の道筋がありますから、それを業務フローだということは出来るのですが、やってみるまでは次回も全く同じであるとは言えないのです。

では、業務フローとは何なのか。いつも行き当たりばったりなのか。そうではありません。仕事には何らかの達成したい・すべきことがあります。それを実現するためのルール集、言い換えると「掟」の集まりであると言えます。

そして事が起こるまでは、それらの「掟」は実は単なる期待・願望・指針でしかなく、現実がルールで捌けないようなときには、アドホックに新しいルートあるいはルールが設定されて処理・業務・仕事が進んでいくことになります。それは二度と通らない道筋かもしれないし、同じ事象が再び起こればもう一度利用されるかもしれません。それを繰り返すうちに、正にルーティンとして定着する「かもしれない」ものだと言えます。

ですから、業務フローというものを考えるときに、いわゆる矢印でつながった道筋を考えるのではなく、その道筋になっていく元となってる「掟」即ちルールセットをまずは良く見るべきではないかと考えるのです。